基礎知識 2020.06.29 2024.06.27
CDNとは?概要からメリット・デメリット、セキュリティ対策としての利用方法まで解説
近年、誰もが気軽にインターネットに接続してコンテンツを閲覧しています。コンテンツ配信事業者は、増加するユーザーとコンテンツ容量に対して、効率的なコンテンツ配信が求められているといえるでしょう。
そんな中、注目を集めているものがCDNです。言葉だけは聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。
CDNを活用することで、効率的なコンテンツ配信ができるだけでなく、Webサイト表示スピードの高速化にも繋がります。
今回は、CDNの概要から仕組みやメリット・デメリット、セキュリティ対策としての活用方法などについて解説します。
また、CDNの導入を検討されている場合やCDNを使用したWebサイト制作をお考えの場合は、以下のリンクからお気軽にご相談ください。
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目次
CDNとは
CDNはContents Delivery Networkの略称です。サービスなどを提供するサーバーの代わりに、コンテンツ配信を肩代わりしてくれるサーバー群の総称となります。
コンテンツ配信の負荷を多くのサーバーで振り分けるため、多くのユーザーが一度にアクセスしても安定したサービス提供を実現するものです。
CDNが必要となるサービスは大規模なサービスに限られますが、Windowsアップデートなどでも利用されており、実は私たちの身の回りでも利用されている例はあります。
CDNはファイル配布だけでなく、短時間で高負荷となるテレビの連動企画サイトや、天気予報・ニュースなどの公共情報を提供するサイトでも利用されるものです。
CDNはサービスサーバーの負荷を軽減し、安定してサービスを提供するために用いられます。
CDNの仕組みについて
CDNは主に次の3つの要素から成り立ちます。
- DNS
- キャッシュサーバー(エッジサーバー)
- オリジンサーバー
DNSとは、IPアドレスとドメインを紐付けるためのシステムです。私たちが「wpmake.jp」のようなドメイン(名前)でWebサイトが閲覧できるのはDNSのおかげです。
キャッシュサーバーがCDNに該当するものであり、オリジンサーバーはサービスを提供するサーバーを表します。キャッシュサーバーはオリジンサーバーからデータを取得し、保持しておきます。
通常、ユーザーはDNSに登録されたドメインに基づいてオリジンサーバーに接続します。しかし、DNSの接続先ドメインをキャッシュサーバーにすることで、オリジンサーバーの負荷を軽減することが可能となるのです。
つまり、ユーザーがWebサイトなどにアクセスする際、オリジンサーバーではなくキャッシュサーバーが応答することで、サーバー負荷を減らしています。
流れとしては、DNSに基づきCDN(キャッシュサーバー)にアクセスし、キャッシュサーバーは事前に保持しておいたオリジンサーバーの情報を返す、という仕組みになっています。
CDNのメリット
CDNは大規模なWebサイトや、大容量のコンテンツ配信で効果を発揮します。ここでは、CDNの代表的な3つのメリットについて見ていきましょう。
Webサイトのページ速度が改善される
CDNを利用することで、Webサイトのページ速度が改善されるメリットがあります。
Webサイトを閲覧する際には「ブラウザの同時接続数」がページ速度に関係してきます。同時接続数はブラウザによってドメインごとに定められており、規定の同時接続数を上回る接続は行えず、待ち時間が発生することに。
近年のブラウザでは、同時接続数は6に設定されていることがほとんどです。HTMLやCSS、画像ファイル、動画ファイルなどを同時に6つダウンロードできるというわけですね。
もし、これらのファイルが7つ以上ある場合、待ち時間が発生してしまい、ページ速度が遅くなる要因になります。
CDNを利用して画像や動画ファイルなどをキャッシュサーバーに保持しておくことで、オリジンサーバーとは異なるドメインからダウンロードできるようになります。つまり、ブラウザの同時接続数6を上回るダウンロードが一度に行えるようになり、ページ速度の改善に繋がるのです。
サーバーの負荷が少なくなる
ページ速度が遅くなる要因の一つに、サーバーの過負荷が挙げられます。Webサイトを閲覧しようとして表示されないことや、503エラーが出たりした経験はないでしょうか。これらはサーバーに負荷がかかりすぎて応答できない場合に起こります。
オリジンサーバーに接続が集中してしまうと、過負荷となる可能性があります。そこで、CDNを利用して負荷を分散することで、オリジンサーバーの負荷軽減が可能です。
503エラーが出ない場合でも、サーバーが過負荷状態で処理に時間がかかってしまい、ページ速度が遅くなることもあります。このような状況もCDNを利用することで改善できます。
運用費用を抑えられる
CDNを利用せずとも、オリジンサーバー側を複数台用意することで、負荷軽減やページ速度の改善は見込めます。しかし、管理するサーバーの数が増えるほど運用費用も必要になり、同時にネットワーク回線の帯域確保や転送容量についても考慮しなければなりません。
ネットワーク回線の帯域確保には費用が必要であり、転送容量に関しても多くのデータを転送するためには、費用が必要となる場合がほとんどです。
そこで、CDNを利用することでオリジンサーバー側の対応を減らすことができ、運用費用を抑えられるようになります。
CDNの利用に関しても費用が必要となる場合がありますが、オリジンサーバー側の対応コストと比べると安価になる場合が多いものです。
CDNのデメリット
CDNには多くのメリットがありますが、反対にデメリットも存在します。利用する上で注意しなければならない点ですので、デメリットについてもしっかりと把握しておきましょう。
アクセス元の特定がしにくくなる
Webサーバーに対してユーザーがアクセスした場合、ログとしてアクセス元情報が記録されます。しかし、CDNではログが取得できず、アクセス元の特定がしにくくなるデメリットがあります。
オリジンサーバー側のログには、キャッシュサーバー(CDN)からのアクセスが主となるため、アクセス元の特定が難しくなるのです。
CDNサービスのなかには、ログファイルを提供するものもあります。ログファイルを使ってアクセス元の解析などを行っている場合には、利用するCDNサービスでログファイル提供の有無を確認しましょう。
サイトの変更が反映されにくくなる
CDNではキャッシュとしてオリジンサーバーのコンテンツを保持しており、定められた期間は保持し続けます。そのため、オリジンサーバー側でコンテンツを更新しても、すぐにCDNに反映されるとは限りません。
たとえば、キャッシュ時間が3,600秒に設定されていた場合、誤った情報でコンテンツを公開してしまうと、すぐさま修正したとしてもキャッシュとして1時間は残り続けてしまう可能性があります。
キャッシュ事故のリスク
CDNのようにキャッシュを用いてコンテンツを配信する場合には、キャッシュ事故に気をつけなければなりません。キャッシュ事故とは、本来キャッシュとして残すべきでないコンテンツを保持してしまうことで起こる事故です。
たとえば、会員サイトでCDNを利用していた場合の事故として、Aさんの会員ページがキャッシュされ、Aさん以外の会員にAさんの会員ページが見られてしまう、というリスクがあるのです。
意図しないコンテンツをキャッシュしてしまうことで起こる事故であり、キャッシュ対象は慎重に設定する必要があります。
セキュリティ対策としてのCDN
コンテンツ配信の効率化のために利用されるCDNですが、セキュリティ対策としても用いることが可能です。
DDoS攻撃からの保護
DDoS攻撃は日本語では「分散型サービス拒否攻撃」と表されます。特定のサービスに対して大量のリクエストを分散して送りつけることで、対象サーバーを過負荷状態にしてサービスの提供をできなくする攻撃です。
しかし、CDNを利用することで、キャッシュサーバーがオリジンサーバーの身代わりとなり、DDoS攻撃を回避することができます。
DDoS攻撃は情報処理推進機構(IPA)の「情報セキュリティ10大脅威」に含まれるほど代表的なサイバー攻撃であるため、CDNを導入するメリットの一つにもなっています。
WAFと一体になったCDNもある
Webサービスを狙うサイバー攻撃はDDoS攻撃だけではありません。CDNではDDoS攻撃を回避できても、単体ではそれ以外の攻撃を防ぐことは難しいでしょう。そのため、他のセキュリティソリューションと組み合わせて利用されることもあります。
そんななか、WAF(Web Application Firewall)と一体になったCDNも存在します。
WAFはWebアプリケーションに特化したファイアウォールであり、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングなどのサイバー攻撃を防ぐことが可能です。
CDNを利用する際にセキュリティ面に不安がある場合は、WAFと一体になったCDNを利用することをおすすめします。
主要CDNサービスの特徴と費用感
ここからは、主要なCDNサービスについて、特徴や費用感を簡単に紹介します。
Akamai
Akamai(アカマイ)はアメリカの大手ネットワーク事業者であり、CDN事業の先駆者と言われる企業です。Akamai公式サイトによれば、インターネット上の全トラフィックの30%をAkamai CDNで処理しているとのこと。
CDN事業をリードするAkamaiでは、次世代のCDNソリューションを提供しています。
特徴
Akamaiは最大手のCDNベンダーであり、世界最大規模のコンテンツ配信ネットワークを有している点が特徴です。
世界130か国以上にある24万台以上のサーバーが利用されており、世界各国からアクセスのある大規模サイトでの活用におすすめです。
費用について
Akamaiの利用料金に関しては非公開です。リサーチした結果では、高級CDNベンダーと表されていることから、他のCDNサービスと比べると高価だと推測されます。
Fastly
Fastly(ファストリー)は2011年に創業したアメリカのクラウドコンピュティングサービスプロバイダーです。FastlyのCDNは日本経済新聞社、メルカリ、クックパッドなどの企業で採用されています。
特徴
FastlyのCDNは高性能HTTPアクセラレータの「Varnish」と、Webサーバーの「H2O」をベースとしています。そのため、高いカスタマイズ性や高速なレスポンス、高速なキャッシュクリアができる点が特徴です。
従来のCDNでは難しかった動的コンテンツもキャッシュすることができ、リアルタイムでの傾向分析や障害把握も可能です。
費用について
従量課金制で10TBまでは1GB単位で$0.12~$0.28(約12円~30円)となっており、費用感としては中程度といえるでしょう。
Amazon CloudFront
Amazon CloudFrontは、クラウドサービスであるAWS(Amazon Web Service)が提供するCDNです。近年、AWSの利用増加に伴い、よく利用されるCDNの一つとして挙げられます。
バンダイナムコや毎日新聞、朝日放送、キヤノンなど多くの日本企業でも採用されています。
特徴
AWSの一機能であるため、他のAWSサービスとの連携が行いやすい点が最大の特徴です。ロードバランサーのALBや、ストレージのS3などをバックエンドとして指定できます。すでにAWSを利用中であれば別途CDNサービスを契約する必要がないため、AWS利用者におすすめです。
費用について
従量課金制で10TBまでは1GB単位で$0.085~$0.170(約9円~18円)となっており、比較的安価なCDNサービスです。
CloudFlare
CloudFlare(クラウドフレア)はCDNやセキュリティサービスなどを提供するアメリカの企業です。フリープランも存在しており、個人でも利用可能なCDNとなっています。IBMやShopify、Discordなどの導入事例があります。
特徴
CloudFlareの最大の特徴はフリープランが存在していることでしょう。無料でCDNを導入することができ、世界80か国・180か所以上のデータセンターで稼働しています。
また、有料プランではWAFと一体化したCDNを導入可能であり、個人から企業までの幅広い層に対応できる点も特徴の一つです。
費用について
CloudFlareでは4つのプランが用意されています。
- Free(無料)
- Pro($20/月)
- Business($200/月)
- Enterprise(要見積もり)
月額課金制であり、今回紹介したCDNサービスのなかで最も安価なサービスです。
参照元:料金プラン(CloudFlare)
CDNetworks
CDNetworksは2000年に韓国で創業したネットワーク関連企業です。アジアを中心に世界100都市以上、200か所を超える配信拠点を構えたCDNサービスとなっています。アジア最大級を謳っており、各国のアジア進出時のCDNサービスとして定評があります。
特徴
「アジア最大級のCDNサービス」と謳っているとおり、Webサイトの配信が容易ではないと言われる中国やロシアでも、しっかりと対応できる点は最大の特徴といえるでしょう。
また、CDNだけでなくクラウド・セキュリティのソリューションも提供しており、Webサイト配信の効率化からセキュリティ対策まで一貫して行える点が特徴です。
費用について
CDNetworksでは、トラフィック量や国・ISPごとの「サーバーグループ」によって価格が変動します。1GB単位で$0.04~$0.237となっており、費用感としては中程度といえるでしょう。
まとめ
CDNはContents Delivery Networkの略称であり、コンテンツ配信を効率的に行い、サービスを安定的に提供するために用いられる技術です。
CDNを利用することで、Webサイトのページ速度の改善が見込めたり、運用費用を抑えられたりするメリットを得られます。しかし、キャッシュ事故のリスクやサイトの変更が反映されにくくなるデメリットには注意しなければなりません。
CDNはセキュリティ対策としても有効であり、さまざまなサービスが存在しています。
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