基礎知識 2025.12.03

バイブコーディングとは?生成AIを活用した新開発手法のメリットと注意点

この記事を書いた人

土井 純也

WordPressスペシャリスト・エンジニア/株式会社デジタルアイデンティティ Tech Div.マネージャー

WordPress専門サービス「wp.make」を立ち上げ、事業責任者として200社以上の大手上場企業のWordPressサイトの制作、保守・セキュリティをサポート。2022年にエンジニアを統括するTechnology Div.を創設。

【 展開しているサービス一覧 】
■WordPress開発サービス「wp.make
■WordPress保守/運用サービス「wp.support
■WordPressハッキング/緊急復旧対応サービス「wp.rescue
■WordPressバージョンアップ代行サービス「wp.versionup

生成AIの進化によって、Web開発の現場は大きな転換期を迎えています。その代表的な変化のひとつが2025年に命名された「バイブコーディング」と呼ばれる新しい開発手法です。

従来は人間がコードを一から書くスタイルが主流でしたが、バイブコーディングでは生成AIと対話しながらコードを生成します。開発スピードの向上など数多くのメリットがあり、個人や中小規模の企業はもちろん大企業でも活用が拡大しています。

本記事では、注目を集めるバイブコーディングのメリットや注意点に加え、そこから生まれつつある新しい職種や可能性について解説します。

バイブコーディングとは

バイブコーディング(vibe coding)とは、生成AIと対話しながらコードを生み出す新しい開発手法です。

特徴は、明確な仕様を細かく提示するのではなく「雰囲気」で要件を伝える点です。たとえば「〇×ができるアプリを作ってほしい」と自然言語で指示を出し、生成AIがコードを生成・修正していくスタイルです。

この手法は2025年2月、OpenAIの共同創業者でありAI研究者のアンドレイ・カルパシー(Andrej Karpathy)氏によって提唱されました。背景には、生成AIサービスの性能向上や開発人材不足といった課題があり、新しい開発スタイルとして注目を集めています。

アンドレイ・カルパシー氏のポスト
アンドレイ・カルパシー氏のポスト(Xより)

従来型のプログラミングと比べると、開発者の役割は大きく異なります。従来は「正確にコードを書くスキル」が求められていましたが、バイブコーディングでは「生成AIが書いたコードを確認し、必要に応じて修正するスキル」が重要になります。

バイブコーディング 従来型プログラミング
開発者の役割 ・指示(プロンプト)を与える
・コードをテストする
・コードを書く
・デバッグする
コーディングの専門知識 ・それほど高度な知識はなくても可 ・高度な知識が必要
開発スピード ・高速 ・時間が必要
保守性 ・AIの出力品質に依存 ・開発者のスキルに依存

バイブコーディングを活用する3つのメリット

バイブコーディングには大きく3つのメリットがあります。開発スピードを飛躍的に高められること、コーディング知識のない非エンジニアでも開発に参加できること、そしてアイデアを即座に形にしてプロトタイプを作成できることです。

これらは従来の開発手法では得られなかった新しい価値を生み出しています。

開発スピードが劇的に向上する

生成AIは、開発者が数日かけて完成させるような規模のプログラムを瞬時に提示できます。そのため、開発者は提示されたコードをベースにして迅速に開発を進めることができ、コーディングにかける時間を大幅に短縮できます。

非エンジニアでも活用できる

バイブコーディングの大きな特徴は、専門的なプログラミング知識がなくても利用できる点です。例えば、マーケティング担当者や営業担当者など、コーディング経験のない人でも生成AIに要望を伝えるだけで、実装可能なコードを得ることができます。

アイデアを具現化するのが容易になる

「こんな機能があれば便利だ」というアイデアをすぐに試せるのもバイブコーディングの強みです。生成AIが試作コードを提示し、開発者はそれを即座にテストできます。アイデア段階から動くプロトタイプを短時間で作成できるため、開発の幅が広がります。

バイブコーディングで使用される主要AIツール

バイブコーディングを実現するには、生成AIを搭載したツールの活用が不可欠です。ここでは、開発の現場でよく利用される代表的なツールを紹介します。

ツール名 開発元 特徴
Claude Code Anthropic ・Anthropic社が開発したCLI(コマンドラインインターフェース)型のAI開発支援ツール
・プランは「Pro(月額17ドル)」「Max 5x(月額100ドル)」「Max 20x(月額200ドル)」
https://www.claude.com/product/claude-code
Cursor Anysphere ・VS Codeをベースにした次世代AI IDE(統合開発環境)
・個人向けプラン(ホビー)あり
・有料プランは「Pro(月額20ドル)」「Pro+(月額60ドル)」「ウルトラ(月額200ドル)」、ビジネス向けプランは「Teams(月額40ドル)」
https://cursor.com/ja
ChatGPT OpenAI ・汎用AIだが自然言語での対話を通じてコード生成・デバッグ・最適化が可能
・無料版あり
・有料プランは「Plus(月額23ドル)」「Pro(月額229ドル)」
https://chatgpt.com/
Gemini Code Assist Google ・GoogleのGeminiを基盤としたAIコーディング支援ツールでVS CodeやIntelliJなどのIDEに対応
・無料プラン(制限付き)あり
・有料プランは「Standard(月額22.8ドル)」「Enterprise(月額45ドル)」
https://codeassist.google/
GitHub Copilot GitHub + OpenAI ・GitHubとOpenAIが共同で開発したコードアシスタントツール
・無料プラン(制限付き)あり
・有料プランは「Pro(月額10ドル)」「Pro+(月額39ドル)」
https://github.com/features/copilot
RooCode Roo Code ・VS Codeの拡張機能として提供されるオープンソースのAIコーディングアシスタント
・無料プランあり
・有料プランは「Cloud Pro(月額20ドル)」「Cloud Team(月額99ドル)」
https://roocode.com/

※なお、各ツールの特徴・プランについては記事執筆当時の情報です。
 最新情報は必ず、公式サイトでご確認ください。

バイブコーディングを導入する前に知っておくべき5つの注意点

バイブコーディングを開発に取り入れる際には、必ず「生成されたコードを人間の目で確認する」ことを徹底してください。AIに任せきりにすると、安全面や運用面で大きなリスクを伴います。

特に注意したいのは、以下の5つです。
バイブコーディングを導入する前に知っておくべき5つの注意点

【コード品質】バグや最適化されていない処理が含まれている可能性がある

生成AIは「もっともありそうな答え」を返す仕組みであり、必ずしも最適なコードを生成するわけではありません。不要な処理や非効率な記述が含まれる場合があり、存在しない関数を呼び出すケースもあるため注意が必要です。

また、構造が入り組んでいて読み解くのに時間がかかる、いわゆるスパゲッティコードと呼ばれるコードが生まれる可能性が高くなります。

そのため開発者はコードを精査して、バグを発見して修正したり非効率な記述を改善する必要があります。また、開発途中で定期的にリファクタリングするように指示することも有効です。

【コード安全性】脆弱性が含まれている可能性がある

AIが生成したコードは、セキュリティを十分に考慮していない場合があります。SQLインジェクションやXSSなどの脆弱性が含まれる可能性のほか、個人情報などの取扱いに問題がある可能性もあります。きちんとチェックしないまま本番環境へ反映させてしまうと、重大な被害に繋がるリスクがあるため注意が必要です。

AIにセキュリティや脆弱性を考慮して開発させることも出来ますが、何らかの脆弱性があったり、それによる被害が出た時に責任を取るのは人間です。

そのため開発者は、事前にコードのセキュリティチェックを行い安全性を確認することが不可欠です。

【コード品質】デザイン・UIに一貫性がない可能性がある

AIが生成するCSSやUI要素は、プロジェクト全体の仕様やガイドラインに沿わないことがあります。人間であれば当たり前のルールが理解できていない可能性があり、結果的にデザインや操作性に統一感がなく、ユーザー体験を損なう恐れがあります。

そのため開発者は、ガイドラインに沿ったデザイン・UIになるようコードをチェック・修正する必要があります。

【コード品質】後から修正するのは負担が大きい

初期段階で生成AIに依存しすぎると、プログラムがブラックボックス化してしまい、後からコードを修正する際に多大な工数が発生します。特に修正や機能追加を繰り返すと欠陥が増え、修正の難易度も高まります。

そのため開発者は、本番環境にコードを反映する際には必ずコードの意図を理解した上で使用する必要があります。開発時に使用したプロンプトを保存しておき、後から確認できるようにしておくことも有効です。

バイブコーディングを行う人に開発知識がない場合には、コードの意図を理解することは難しい場合もあります。自分や社内限定のアプリなどを開発する場合は問題は少ないですが、もし、不特定の第三者に公開するようなアプリを開発する場合には、最終段階でプロのエンジニアにコードレビューしてもらうことをおすすめします。

【適用範囲】大規模・複雑な開発には適していない

生成AIは短期的なアイデア検証や小規模機能の追加には強みがあります。

しかし、大規模な開発や複雑なシステム構築では、ハルシネーションやエラーが発生しやすく、修正の難易度も高くなります。そのため、バイブコーディングは大規模・複雑な開発には適していません。

そのため開発者は、社内で利用する小規模ツールや修正を前提としたプロトタイピングなどの場面でバイブコーデディングを活用する、複雑なプログラムを小規模に分解してコーディングさせるなど、利用用途を分けて使用するなどの工夫が必要です。

バイブコーディングの出力をブラッシュアップする”vibe code cleanup specialist”という職種も誕生

バイブコーディングは高い利便性と効率性から急速に導入が広がっています。しかしその一方で、生成AIが出力したコードを十分に精査せずに利用してしまい、問題が発生するリスクも急激に高まっています。

実際に、生成AIが出力したコードを自社サービスに実装したところ、与えられたデータを正しく使用せず誤った処理を行っていた事例も報告されています。このようなケースは散見されており、大きな事故につながる危険性があります。

こうしたリスクを防ぐために注目されているのが「vibe code cleanup specialist」と呼ばれる専門職です。これはAI生成コードの品質改善を担う役割であり、生成AIが提案したコードをレビューし、修正・改善を行って本番環境で安全に利用できるレベルに仕上げることが求められます。

今後、AIの能力がさらに向上し、コードの品質も改善されていくことが予想されますが、最終的なコードの品質に責任を持つ立場として重要なポジションとなる可能性があります。

WordPressサイト開発におけるバイブコーディングの可能性

WordPress開発の現場でも、バイブコーディングの活用が広がっています。

エンジニアが効率化を目的に導入するケースはもちろん、エンジニアが不在の企業でも、内部運用に必要な機能開発や軽微なカスタマイズを自社で行うためにバイブコーディングを取り入れ、成果を上げている事例が増えています。

特にWordPressは、システム部門を持たない企業で非エンジニアの担当者が更新や運用を担うケースが多く見られます。簡単な機能追加であれば小規模なコードで実装できることも多く、バイブコーディングとの相性は非常に高いといえます。

例えば、以下のような場面でバイブコーディングを導入することで、短時間かつ低コストで開発を進めることが可能です。

【WordPress開発でバイブコーディングが活用できるシーン例】

  • シンプルなプラグインの開発
  • 自社オリジナルの機能を備えたテーマの開発
  • テンプレートの簡易的なカスタマイズ

ただし、前述の注意点にあるように「AI任せ」にするのではなく、レビューやセキュリティチェックを組み合わせることが不可欠です。

wp.geek編集部 解説:本番環境や長期運用を前提とする場合は「修復&最適化」が不可欠

バイブコーディングの活用は、WordPress開発においても大きな可能性があります。特に、これまでエンジニア不在の状態でサイトを運用してきた企業にとっては、大きなメリットとなるでしょう。

一方で、生成AIが出力するコードには、バグや脆弱性、デザインの不統一、後からの修正負担といったリスクが存在します。

とはいえ、リスクがあるからといって利用を避けるのは現実的ではありません。「コーディング知識がなくても利用できる」ことと「必ず人の目でコードをチェックすること」は一見矛盾するように見えますが、実装前にテストを行い動作や安全性を確認するなど、リスクを回避する方法を取り入れながらAIと人間が役割を分担することが重要です。

さらに、可能であればプロンプトのノウハウを社内で共有・蓄積する仕組みを構築し、組織全体で活用できるようにすることも有効です。

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